プロが教えるネクタイのアイロンの掛け方とシワ伸ばし
お気に入りのネクタイほど、使うシーンが多くどうしてもシワがついてしまいます。素敵なスーツを着ていても、ネクタイにシワがあるとせっかくのスーツ姿が台無しです。
間違った方法でネクタイにアイロンを掛けてしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。正しいアイロン掛けの方法やテクニックを身に付け、ネクタイをいつまでも綺麗な状態に保ちましょう。
ネクタイのアイロン掛けでの失敗や注意点
ネクタイの洗濯後のシワ伸ばしの為に、アイロン掛けを行う方は多いと思いますが、リスクがあるので、どういう失敗や注意点があるのかを、先ずは頭に入れておきましょう。
ネクタイのアイロン掛けでテカリが出る
生地の繊維が押しつぶされて表面が平らになり、光が反射することによってテカテカと光って見える現象を「テカリ」「アタリ」と言います。
「テカリ」と「アタリ」はどちらも見え方は同じですが、発生原因により言葉の使われ方が分けられます。
「テカリ」は身体の動きにより生地の特定部分に圧力や摩擦などの負荷がかかり、生地がつぶれることで起こります。
一方「アタリ」とは、アイロンなどの仕上げ方に問題がある現象で、ネクタイのアイロン掛けによるテカリは「アタリ」と呼びます。
アイロンの重みや熱によってネクタイの繊維が潰れてしまうと、光を反射しやすくなります。
繊維が鏡のように平らになったことで光が反射し、目に光が強く入ってくるため、光沢があるように見えます。
アタリが出てしまうとせっかくのネクタイが台無しになってしまいますので、アイロンの掛け方には注意が必要です。
ネクタイのアイロン掛けで溶ける
ネクタイの生地には天然素材から人工素材まで様々な種類があり、ネクタイの素材によって熱への耐性が異なります。
ネクタイは熱に弱くとてもデリケートな素材で出来ているものが多く、熱に弱い素材のネクタイに高温のアイロンを当ててしまうと、場合によっては生地が溶けてしまうことがあります。
ネクタイにアイロンを掛けるときは、必ず素材を確認するようにしましょう。
ネクタイのアイロンの掛け方や手順
実際にネクタイにアイロンを掛ける前の準備と手順に沿って解説します。
ネクタイのアイロン掛けでは当て布と直接どちらが良い?
ネクタイをアイロン掛けする際には、必ず当て布をします。
当て布はネクタイをふっくら仕上げ、アタリが出ないようにするために必要なものです。アイロンとネクタイの間に当て布を入れることで、繊維への引っ掛かりや生地の傷みを防ぎ、ネクタイの伸びを抑えることもできます。
また、アイロンの熱によってネクタイの芯地を傷めてしまう可能性もあります。芯地はネクタイの型崩れを防ぎ、生地にハリやコシを持たせる役割があります。
芯地が傷んでしまうとネクタイの立体感が損なわれ、品質を落としてしまいます。
ネクタイの中には熱に強い素材もありますが、生地に直接当たる熱を緩和させることでダメージを防ぐことができますので、あて布を使用してアイロン掛けを行うことをおすすめします。
当て布は専用品も販売されていますが、家庭にあるガーゼやハンカチ、手ぬぐいなどでも代用できます。耐熱性、耐久性の高い綿素材の生地で、色の薄いものが当て布に適しています。
色の濃いものはアイロンの熱で色落ちや、色移りしてしまう可能性があります。薄い色や、できれば白色のものを選ぶと良いでしょう。
ネクタイのアイロン掛けの温度
ネクタイにアイロンを掛ける際の温度も注意したい点です。アイロンの温度は何度まで大丈夫なのか必ず洗濯表示を確認しましょう。
アイロンに点が2つは温度200℃を限度としてアイロンかけ可能 | |
アイロンに点が2つは温度150℃を限度としてアイロンかけ可能 | |
アイロンに点が1つは温度110℃を限度としてスチーム無しでアイロンかけ可能 | |
アイロンに×はアイロンがけ禁止 |
アイロンの設定温度は、三段階に分けられています。最適な温度は、素材ごとに異なる傾向がありますので、目安として押さえておくと便利です。
「低温」 80~120℃(アクリル・ポリウレタン・アセテート)
「中温」140~160℃(ウール・シルク・ポリエステル・キュプラ・レーヨン・ナイロン)
「高温」180~210℃(綿・麻)
ネクタイはポリエステルのような化学繊維を使用している他にも、ウールやシルク、レーヨン、綿や麻素材を使用しているものがあります。
ネクタイのアイロン掛けの温度は「中温」でスチーム使いがもっとも適切ですが、シルクなど熱に弱い素材の場合は、低めの温度設定で行うと安心です。
アイロン掛けの手順
1.アイロンを低温~中温程度に温め、スチーム設定にします。
2.ネクタイをアイロン台の上に平置きし、シワを手で優しく伸ばします。
3.当て布をして、ネクタイの裏側からアイロンをかけます。アイロンは直接当てるのではなく、ネクタイからアイロンを1cmほど浮かした状態でスチームを当てながらシワを伸ばしていきます。特にシルクは水分に弱いので、スチームの水滴がネクタイに落ちてしまわないように注意しながら行いましょう。
4.アイロンを一度置き、当て布を外して手で優しくシワを伸ばします。ネクタイによって伸びやすい方向と伸びにくい方向があります。無理に伸ばすと型崩れの原因になるので、注意しながら優しくシワを伸ばしましょう。
5.表側も同じようにアイロンがけを行い、少しずつシワを伸ばしていきましょう。
6.最後にスチームを切ってアイロンで水分を飛ばします。スチームを切ったアイロンを浮かしながらかけ、熱で水分を蒸発させながら乾かしましょう。ネクタイには触れない、ギリギリの距離を保つことがポイントです。
ネクタイのアイロン掛けで菜箸を使うテクニック
ネクタイのアイロン掛けにもうひと手間を加えることで、ネクタイをさらに美しく仕上げることができます。
ネクタイの裏と表にアイロンをかけた後、ネクタイの両端に菜箸を入れます。菜箸を入れた状態で、当て布をした上から横側に軽くアイロンをかけ、横の線を消します。
厚みがきちんと形作られているか確認したら再び当て布をし、スチームを切ったアイロンを浮かしながらかけて乾かします。
ネクタイは少し厚みがあった方が美しいので、ひと手間を加えることで適度な膨らみが生まれ、ふんわりとした仕上がりとなります。
このひと手間で、ネクタイの仕上がりが格段に良くなりますので、ぜひ試してみてください。
ネクタイの毛羽立ちはアイロンで直るか?
スーツやベルトなどと擦れて、ネクタイが毛羽立ってくるときがあります。細かい織柄や角の部分に出やすく、処理せずそのまま使っていると、毛羽立ちがどんどんひどくなり絡み合ってしまいます。
このネクタイの毛羽立ちは、アイロンでは取ることはできません。
部分的であれば、ハサミでカットしても良いですが、毛羽立ちはハサミで切ってもすぐ元に戻ってしまいます。ネクタイの毛羽立ちはライターを使った方法で対処することができます。
ネクタイの毛羽立っている部分を手早く炙ると、毛羽立ちが縮んできれいになります。一カ所を熱すると焦げてしまうので、毛羽立ちの部分を素早く一往復させましょう。毛羽が短いうちにこまめに行うことで、綺麗な状態を保つことができます。
シルクやウール素材であればこの方法で問題ありませんが、ナイロンやポリエステル、アクリルなどの素材のネクタイは溶けることがあるので、この方法は使えません。
必ずネクタイの素材を確認してから行うようにしましょう。
ネクタイの軽いシワはスチームやお風呂で伸びる
ネクタイの軽いシワであれば、お風呂場の蒸気で十分シワを伸ばすことができます。
アイロンのスチームは、大量の蒸気を当てることによってシワを伸ばしていきますが、入浴後のお風呂は温かい蒸気で充満していて、スチーム機能のような効果が得られます。
入浴後、浴槽にお湯を溜めたまま1時間ほどネクタイを吊るしておき、蒸気をネクタイに吸わせることで、軽いシワ程度であれば伸ばすことができます。
また、蒸気は臭いの成分を吸着して取り去ってくれるので、シワも臭いも取れて一石二鳥です。
ネクタイをお風呂場で干す際には、ネクタイを落として濡らしてしまわないように注意して干しましょう。長時間、干しっぱなしにするのも、湿気を吸い込み過ぎて、臭いやカビの原因になるので注意が必要です。
ネクタイは思っているよりデリケートな素材のため、1日身につけたあとは2、3日休ませるなど、3~4本をローテーションで使うことも長く愛用するためには大切です。
スーツに欠かせないアイテムのネクタイを正しいお手入れで、常に美しい状態にしておきたいものです。