プロが教える失敗しない礼服の洗濯方法とクリーニング

礼服を着用後、「そんなに長い時間着ていなかった」あるいは「汚れていないしわざわざクリーニングに出すのは」とためらってしまうこともありますよね。
ですが、礼服はとてもデリケートで素材でできています。着用後は洗濯をして、正しく保管をしておかないと、さまざまなトラブルの原因となります。
いざ着用しようと思った時に、そういったトラブルがないよう自宅での洗濯方法やトラブルが起きた際の改善策をご紹介します。
そもそも、礼服と喪服の違いは何か
まず、「礼服」と「喪服」の違いがよく分からないという方がいらっしゃいますが、以下のように使い分けられます。
礼服 | 冠婚葬祭全般で着用する衣服 | ツヤがある |
喪服 | 葬式など弔事で着用する衣服 | ツヤがなく漆黒 |
【よく起こるトラブル】
- シミやカビ
- テカリ
目立つ汚れや食べこぼしがないと、汚れていないと思う方もいるかと思いますが、実は意外と汚れているんです。衣類は着用するたびに「汗」や「皮脂」が付着するため、それを放置することで、上記のようなトラブルの原因となります。
礼服を自宅で洗濯する方法

洗濯をする前に、まずどんな衣類でも共通して確認することとして「洗濯タグ」です。最近は、自宅でも洗濯が可能な礼服もありますが、水洗いができない場合はクリーニング店へ持っていきましょう。
洗濯タグの見方として、
![]() | 水温は40度を限度に 洗濯機は弱いコースで洗うことが可能 |
![]() | 水温は40度を限度に 手洗いが可能 |
![]() | 家庭での洗濯不可 |
洗濯タグを確認後は、ポケットに物やゴミが入っていないかチェックしましょう。また、色落ちの差が出ないように必ず上下セットで洗濯することをおすすめします。
礼服を手洗いする方法
水温は30℃以下。中性洗剤もしくはおしゃれ着洗剤を使用する
擦ったりしないように、上から20回程度押し洗いをする
泡や汚れがなくなるまで、水を入れ替えてすすぐ
約30秒〜1分程度(脱水が長いとダメージを与える可能性がある)
礼服を洗濯機で洗う方法
中性洗剤またはおしゃれ着洗剤を使用する。「手洗いコース」を選択
礼服の脱水方法
礼服の洗濯後の乾燥方法

洗濯機に入れたままにすると、シワや型崩れの原因になる
風通しが良い場所で陰干しする
自分で礼服に付いたカビを洗濯や落とす方法

礼服は急遽必要になることが多いため、いざ着ようと思った時に「カビが生えてる」「でもクリーニングに出す時間なんてない」というケースも少なくありません。
礼服はデリケートな素材なので、基本的にはクリーニング店へ依頼することが望ましいですが、今回は応急処置としてカビが生えていた時の対処法をご紹介します。
【カビが生える原因】
- 湿気の高い場所で保管されていた
- 汗や皮脂が付着した状態で放置されていた
- 洗濯不足
- 密封袋に入れたまま保管していた
やってはいけない応急処置
- 摩擦や擦りすぎる
- 濡れタオルで拭く
- 漂白剤を使用すること
- 熱湯で洗濯すること
- 消毒用エタノールで除菌する(シルク素材)
摩擦や擦りすぎる
摩擦やこすり過ぎることは、カビを広げる原因になります。また、柔らかい素材の場合、生地を傷をつけてしまう可能性があります。
濡れタオルで拭く
濡れタオルで拭くと、繊維の奥にカビが染み込んでしまいカビを除去しづらくなります。カビは湿気や水気を好むため、更にカビが繁殖してしまう恐れもあり。
漂白剤を使用すること
カビのついた部分を除去する効果がありますが、漂白剤を使い過ぎると、衣服の素材を傷める原因になることがあります。また、漂白剤とアンモニアが混ざると、有害なガスが発生するため、混ぜて使用しないように注意してください。
熱湯で洗濯すること
カビを死滅させる効果がありますが、衣服の素材によっては縮んだり、変色したりすることがあります。また、カビの胞子は、高温で死滅することはないため、完全に除去することはできません。
消毒用エタノールで除菌する(シルク素材)
シルクの場合は、かえって生地を傷めてしまうため使用は避けましょう。
礼服についたカビを落とす方法
室外の物干し竿に吊るし、カビが移らないように物を片付ける
乾いた布でカビを振り払う(マスクや手袋を着用することをおすすめ)
布にエタノールを含ませて軽く叩きながらカビを取り除く
礼服に付いたホコリの取り方

ホコリがついた礼服は「古臭い」「清潔感がない」などあまり良い印象を与えません。ですが、いつの間にかホコリがついているということもあるかと思います。その原因として、礼服の素材に静電気が溜まりやすいということがあげられます。
そこで、ホコリが付きにくい素材や礼服に付着したホコリを取る方法について、ご紹介していきます。
【ホコリが付きやすい素材】
- ポリエステル
- アクリル
- ナイロン 等
【ホコリが付きにくい素材】
- ウール
- コットン 等
【ホコリを取る方法】
- 柔らかいブラシで払う
- 粘着クリーナーやガムテープ
- 輪ゴムを礼服の上に置いて手のひらでコロコロ転がす
- キッチンスポンジ
柔らかいブラシで払う
ブラシにはいくつか種類があり、素材によって使い分けることをおすすめします。一般的には「馬毛」と「豚毛」があり、馬毛は柔らかく豚毛は硬い毛質となっています。礼服のブラッシングには毛質の柔らかい「馬毛」を使用しましょう。
粘着クリーナーやガムテープ
注意点として、カーペット用などの比較的粘着力が強いタイプのローラーは、生地を傷める可能性があるため、気をつけましょう。
輪ゴムをコロコロ転がす
礼服の上に輪ゴムを置き、手のひらで輪ゴムをコロコロと転がしてみましょう。そうすると、輪ゴムにホコリが絡まり取ることができます。
キッチンスポンジ
キッチンスポンジの柔らかい面を礼服に軽く撫でるように滑らすことで、ホコリを取ることができます。
礼服の虫食い対策と正しい保管方法

「虫食い」と聞いたことはあるかと思いますが、その正体は知らない方が多いのではないでしょうか。日本にいる衣類害虫は「イガ」「コイガ」「ヒメカツオブシムシ」「ヒメマルカツオブシムシ」の4種類で、衣類を食べるのは幼虫です。
虫がいるかもしれないと思うとゾッとしますが、お気に入りの服や、急遽必要になった礼服が虫食いによって穴があいていることを考えると、ゾッとでは済まないですよね。
そこで、そんな衣類害虫から礼服を守るための対策と正しい保管方法について、ご紹介していきます。
衣類害虫が好む環境
気温15度〜25度、湿度60〜80%で空気の流れが悪くジメッとした環境です。
頻繁に着ない礼服だからこそ、そのような環境に保管されていると虫食いによって穴があいているということが起きる可能性がとても高いです。
また、やってしまいがちな収納例として下記3点ありますが、当てはまる方は今すぐ改善しましょう。
- クリーニングのビニールをつけたまま収納する
- 防虫剤が期限切れ
- 窮屈な状況で収納
虫食い対策
必ず洗濯またはクリーニング
衣服についた汚れや汗などは、虫の餌となってしまいます。保管前には必ずお手入れをしましょう。
風通しの良い場所へ保管
直射日光が当たらない場所が望ましいです。
虫除け剤を使う
注意点として、虫除け剤は衣服に直接付着すると色落ちや変色の原因になることがあるため、直接触れないように気をつけましょう。
衣類害虫が嫌いな香りを置く
ハッカ油やラベンダーなどの天然の虫除け効果がある香りの袋を入れると、虫の侵入を防ぎやすくなります。
正しい保管方法
型崩れや風通しを良くしてカビ防止。
不織布カバーはホコリを避けつつ湿気を逃すことが可能。
礼服のおすすめ洗濯頻度やタイミング

結論、礼服は着用ごとに洗濯することをおすすめします。
冒頭でもお伝えしましたが、礼服は知らないうちに案外汚れていることが多くその状態でクローゼットに保管すると、次着用するまでに期間が空き、その間にカビが発生したり汚れなどが衣類害虫の餌となり、虫食いの原因となります。
礼服のクリーニング

礼服のクリーニングに出すタイミングや頻度はいつ?
着用しようと取り出した際に、カビや汚れなどで大慌てしないように礼服は着用し終えたら、都度クリーニングへ出しておくことが最も最適なタイミングです。
また、クリーニングに出す前のポイント3点として
- 礼服であることを事前に伝える
- ポケットの中を確認する
- 汚れやほつれ、破れている部分を確認しておく
礼服であることを事前に伝える
デリケートな素材が使われている+長期保管する衣類のため、礼服用のクリーニングコースで対応してもらいましょう。
ポケットの中を確認する
クリーニング工場では、事前にポケットの中を確認してからクリーニングを行いますが、万が一見落としていた場合に、紛失しないよう必ず確認をしておきましょう。
汚れやほつれ、破れている部分を確認しておく
礼服のみならず、クリーニングへ出す際は事前に状態を把握しておくようにしましょう。クリーニングから戻ってきたあとに見つけても、どの時点でついたか分からないということにならないためにも事前に把握・申告をしましょう。
礼服のクリーニングに掛かる日数など期間
クリーニング店によって日数の違いがありますが、だいたい2日〜1週間以内で仕上がります。また、ライフスタイルに合わせて「宅配クリーニング」と「店舗型クリーニング」を使い分ける方法もあります。
【宅配クリーニング】
ネットで申し込みができ、宅配業者が自宅へ集荷に来て、クリーニングが終わった後も届けてくれるサービスです。仕事や育児が忙しく店舗へ持って行けない方や、礼服をすぐに着る予定がない方などにおすすめ。
【店舗型クリーニング】
従来のように、店舗へ衣類を持っていきクリーニング終了後は、再度店舗に受け取りに行きます。店舗型のメリットは、仕上がりまでが早いことです。
礼服のおすすめクリーニングコースや出し方
礼服は着る機会が少なく、長期的にクローゼットに保管されるため「防カビ・防虫加工」や「撥水加工」など長期保管向けのクリーニング加工がおすすめです。
また洗濯時と同様、別々で出すとクリーニング回数が異なり色合いが変わってくるため、必ずジャケットとスカート(スラックス)をセットで出すようにしてください。
礼服のクリーニング料金と値段が高い理由
礼服のクリーニングは一般的なスーツと比べ料金が高くなる時があります。礼服の場合、一般的なスーツと違い染める過程が異なるため、同じ「黒」でも深さの違いが多いです(ものによって何度も染めるものもある)
また先程もお伝えしたように、長期保管用の加工が施されるため料金が高くなりますが良い物を長く着れるようにするためにも理解しておきましょう。