プロが教える失敗しないシルクの洗濯とクリーニング
シルクの洗濯で失敗しない為の注意点とリスク
「シルク」とは、カイコの繭(まゆ)からとれる繊維でできた天然の織物素材で、軽くて滑らかな肌触りが特徴です。また、保温性や吸湿性にも優れています。
光沢感があり美しい見た目も魅力的ですが、とてもデリケートな素材なので、お手入れの際はクリーニング店へ必ず持っていかなければいけないと考える方も多いかと思います。
自宅でシルクを洗濯をする際は、正しい洗濯方法をしなければ縮みや伸び・仕上がりにゴワつきが生じるリスクもあるため、面倒臭い・難しいというイメージをお持ちの方もいますが実際は簡単です。
そこで、シルクを自宅で洗濯する際の注意点を6つ覚えておきましょう。
- 取扱いのラベルを事前に確認する
- 手洗いをする
- 中性洗剤を使用する
- 濡れたまま長時間放置しない
- 他の衣類と一緒に洗わない
- 直射日光を避ける
取扱いのラベルを事前に確認する
シルクによっては水洗いができない場合もあります。そのため、洗濯タグに記載された取り扱い方法を必ず確認し水洗い可能か確認しましょう。
40℃を限度とし、洗濯機で洗濯できる | |
手は40℃を限度に手洗い可能 | |
家庭での洗濯禁止 |
手洗いをする
基本的に手洗いをおすすめします。ただし、手洗いが可能な表示であっても、濡らすと縮みや色落ちが発生する場合もあるため、全体を洗濯する前に洗っても問題がないかテストしましょう。
- 目立たないところに少量の水を垂らす
- 5分後、綺麗な布で濡らした部分を優しく叩く
- 布にシルク(絹)製品の色が移ったり、色がにじんでシミになっていないか確認する
中性洗剤を使用する
繊維が非常にデリケートで、塩素系漂白剤や漂白剤入りの洗剤などの強力な洗剤を使用すると、繊維が傷んでしまう可能性があります。
特に、漂白剤は強い酸性の成分が含まれているため、シルクの繊維を傷めるだけでなく、色落ちや変色の原因にもなることがあるため、必ず中性洗剤またはシルク専用の洗剤を使用しましょう。
濡れたまま長時間放置しない
シルクは水分を吸収すると繊維が膨らみ、この状態で摩擦が起きると毛羽立ってしまいます。洗うときは優しくあまり摩擦をかけないように手洗いしましょう。
他の衣類と一緒に洗わない
混色で洗うと色落ちする可能性があるため、シルクの服のみで洗濯しましょう。
直射日光を避ける
紫外線に当たることで、その一部が黄色い物質に変化するため、直射日光を避けて風通しの良い場所に干しましょう。
自宅でのシルクの洗濯方法や洗い方
シルクの洗濯におすすめの洗剤と柔軟剤は使えるのか?
自宅でシルク素材の服を洗濯する際におすすめの中性洗剤をご紹介します。
■絹用家庭洗剤 シルクランドリー
長年研究をし続けた老舗のシルク専用メーカーの商品でシルク専用の洗濯洗剤です。繊維を痛めずシルク本来の風合いも変わることなく、スッキリ洗い上げることができます。
■アクロン
縮み・色褪せ・シワなどの洗濯ダメージを防ぐことができます。シルキータッチ成分と繊維保護成分で繊維をコーティングすることで毛玉を防ぐことができます。
■ウタマロリキッド
アミノ酸系洗浄成分を主成分としているため、風合いを守りながら色柄物やおしゃれ着洗いができます。
おしゃれ着用洗剤で「シルクも洗濯可能」と書かれていますが、成分が弱アルカリ性や弱酸性のものもあります。
使用前に、必ず衣類の洗濯タグに従って洗濯方法を確認し使用しましょう。
■重曹
繊維を傷つけずに汚れを落とすことができるのでシルク素材の洗濯に適しています。使用方法は重曹を適量の水で溶かし、シルク素材を優しく洗うようにしましょう。
※洗濯機を使用する場合は、水に溶けなかった重曹が詰まり故障の原因になってしまうため重曹が使用できない機種もあります。
■ヘアシャンプー
シルクはタンパク質を主成分としているので、人の肌や髪と似た組成をしています。ヘアシャンプーを代用する場合は無香料のシャンプーを使用することをおすすめします。
シルクを手洗いする方法
洗濯タグの手順に従い水温を確認する。一般的に30℃以下でバケツなどに溜める。
※高温だと繊維が縮んだり、色落ちする可能性があるため。また冷水だと汚れが十分に落ちないこともある。
液体タイプの中性洗剤がおすすめ。量は使用する洗剤の指示に従い洗濯液を作る。
洗濯液につけて振り洗いをする。汚れが目立つ場合は、やさしく押し洗いをする
きれいなぬるま湯で2.3回ほどすすぐ。
軽く押して水分を取り除き、タオルで包み再度水分を取り除く。
形を整え陰干しする
シルクを洗濯機で洗う方法
中性洗剤もしくはおしゃれ着用洗剤を使用
他の衣類と一緒に洗わないこと(脱水の際にシワになりやすい可能性があるため)
また、汚れている部分があれば、その部分を表にして畳んでネットに入れると効果的
シルクの洗濯後の脱水方法
シルクの洗濯後の乾燥方法
ハンガーや洗濯バサミで留めると型崩れの原因になるため使用せず、シルクは紫外線を吸収する性質があるので直射日光・高温・多湿を避けて風通しの良い場所に干すようにしましょう。
また、平干しには専用のネットを使用し必ず平干ししましょう。
ハンガー
通常の吊し方とは異なり、1つのハンガーで干す場合は服の胸あたりで折りハンガーにかけます。※三角形の底辺(直線)部分にかけるイメージ
ハンガーのピンチ
平干しネットのように使用するイメージで、ハンガーピンチの種類によって正方形や長方形のものがありますが、平干しするなら長方形のタイプを用意しましょう。
- ハンガーピンチの上の部分を拭く
- ハンガーピンチの上に服を置き、袖や胴体部分が垂れ下がらないように調整
お風呂のフタ
フラットタイプだと、風通りが悪く乾くまでに時間がかかるため、凸凹のあるタイプがおすすめです。
- フタを拭く
- 服をシワにならないようにフタの上に広げる
洗濯カゴの上
- 洗濯カゴをひっくり返し、側面を拭く
- 服をシワにならないようにフタの上に広げる
乾燥機で乾かすのは絶対にNGです。シルクは熱に弱いので、毛玉ができたり、変色・変形の原因となり元の高級感のある光沢も戻ってきません。
乾かすときのひと工夫で仕上がりが決まるので気をつけましょう。
シルクの黄ばみなどの染み抜きや漂白方法
シルクは、日光でも黄ばみやすい特性があるため数回しか着ていないのに脇部分や首周りなどが黄ばんでしまうことがあります。
そんな時に、塩素系漂白剤を使用すると衣類がまだらに白くなったり、生地が傷むことで変色したると風合いを大きく損ないますので、絶対にやめましょう。
黄ばみなどの染み抜きや漂白方法として、4点ご紹介します。
- 柔らかいブラシで軽くブラッシングする
- 中性洗剤を使って手洗いする
- 液体タイプの酸素系漂白剤を使う
- 専門店に相談する
柔らかいブラシで軽くブラッシングする
黄ばみが軽い場合は、柔らかいブラシを使って軽くブラッシングするだけで効果があります。ただし、力を入れすぎるとシルクが傷つけられるため優しくブラッシングしましょう。
中性洗剤を使って手洗いする
- ぬるま湯に中性洗剤を入れて泡立る
- シルク製品を浸し軽くこすり洗いをする
- ぬるま湯を2.3回替えながらよくすすぐ
- タオルで包んで水分を取り除く
シルクの品質を保つため、できるだけ洗濯機は使用しないことをおすすめします。
液体タイプの酸素系漂白剤を使う
酸素系漂白剤は、基本的に繊維を傷めることなく汚れの色素や汚れ自体を落としやすくすることができます。
専門店に相談する
繊細な素材で専門知識が必要な場合があるため、黄ばみが頑固で取れない場合は、専門店に相談することをおすすめします。また、専門店でのクリーニングは、シルク製品を傷つけることなく、黄ばみを取り除くことができます。
シルクが濡れた時の水染みの取り方
「水染み」とは、衣類に水が付着した際に、水の成分が染料と反応して色素が変化してしまい、変色した跡のことを指します。
また、雨が衣類に付着した際、雨水中に含まれる微量な鉄分が衣類の染料成分と反応して茶色や黄色などの変色が生じたり、雨水中に含まれる汚れや塵などの微粒子が衣類に付着し、色素と反応して「水染み」が発生することもあります。
【水染みの取り方】
■染みた部分を速やかに乾かす
乾いた布で軽く叩いたり、タオルで水分を吸い取るようにして染みた部分をできるだけ乾燥させましょう。ただし、直射日光や高温多湿な場所での乾燥は避けてください。
■手洗いをする
洗濯タグを確認後、水洗い可能であれば手洗いをしましょう。
■クリーニング店へ持って行く
シルク素材の衣服を手洗いすると、素材が傷つく恐れがあるため、ドライクリーニングを利用することがおすすめです。ドライクリーニング店では、シルク素材に適した洗剤や専用の処理方法を使用して、「水染み」を落とすことができます。
シルクに血液が付いた時の取り方
水に触れる時間が長いほど血液が染み込むため、できるだけ早く処理する。
血液の染みが残っている箇所を、中性洗剤を少量つけた布で軽く叩く。
この際も、できるだけ早く終わらせるように注意する。
直射日光や高温を避け、風通しの良い場所に置く。
シルクの油汚れの取り方
水洗いする場合
汚れに直接粉末洗剤を塗り、10〜15分間放置
汚れが浮き上がったら柔らかいブラシで軽くこすり洗剤を落とす
必ずネットに入れて、「おしゃれ着コース」で脱水時間は15〜30秒程度
手洗いの場合:軽く洗ってから、水ですすぐ
平干しし、直射日光が当たらないようにする
ベンジンを使用する場合
ベンジンとは、原油から精製された液体で、油分が含まれているため繊維を傷めずに油分汚れを溶かす性質があります。揮発性が高く、放置すれば気化するので、すすぎの必要がないのも特徴です。
使用前に、目立たない箇所につけて色落ちしないか必ずチェックをしましょう。
シミが残っていれば水溶性のシミの可能性あり。その場合、中性洗剤で部分洗いをする
シルクが臭い時の対処法
- 陰干しをする
- 中性洗剤を使って洗う
- ドライクリーニングを利用する
また、シルクは本来のシルク糸である生系になるために良悪の選別がされますが、精錬不足が原因で不純物が残りやすく、発酵したり腐ったりして糸の中に残留します。これが臭いの発生源となります。
品質の良いシルクは臭わないため、購入する際は下記に注意しましょう。
- 価格が安すぎるものは避ける
- 「シルク特有の臭いがする」と表記されている
- 原材料を確認する
シルクの洗濯に失敗した時の対処法
縮みや生地が痛んだ場合
- タライに水とシャンプーを1プッシュ入れて混ぜ、シルクを30分浸ける
- 水を入れ替えて軽くすすぐ
- 水にコンディショナーを1プッシュ入れて混ぜ、シルクを10分浸ける
- 水を何度か入れ替え、泡がなくなるまですすぐ
- タオルで挟み、水気を取る
- シワにならないよう平干しして、直射日光を避ける
色移りした場合
シルク専用の染み抜き剤を使用して再洗濯を行います。ただし、色移りがひどい場合は、専門のクリーニング店に相談しましょう。
シルクのおすすめ洗濯頻度や回数
シルクは繊細でデリケートな素材であるため、頻繁な洗濯は避けた方が良いでしょう。一般的には、1~2回の着用後に洗濯することが適切です。ただし、着用状況や汚れ具合によっては、より頻繁な洗濯が必要な場合もあります。
着用後は風通しの良い場所に吊るして陰干しするなど、手入れをしっかり行い、長くお使いいただくように心がましょう。
シルクのクリーニング
クリーニング店では一般的に、水を使わず特殊な溶剤を使って洗浄するドライクリーニングを行います。
シルクのクリーニングの相場は、地域やクリーニング店によって異なりますが、一般的には1枚あたり2,000円〜5,000円程度です。ただし、状態や汚れの程度によって価格が変わる場合があるため、事前にクリーニング店に確認しましょう。
また、シルクをクリーニング店へ出したがシワだらけで返ってきた事例もあります。素材に合った技法でクリーニングを行いますが、念のため事前にシルク素材であることを申告しておくことをおすすめします。
もし、クリーニング店がシルク素材の服の処理を失敗した場合は、まずクリーニング店に連絡して事実を確認しましょう。
一定の保証期間内であれば、衣類の補償を行うことがありますが保証期間や補償内容はクリーニング店によって異なりますので、事前に確認することをおすすめします。