プロが教えるアクリル素材のニットやセーターの洗濯方法
軽くて温かいアクリル素材のニットやセーターですが、洗濯するとシワや毛玉ができてしまった…なんてトラブルはつきものですよね。
そしてよくある乾燥機にかけると伸びる?縮む?説は本当はどっち?などの疑問を含め今回はそんなアクリルニットやセーターのおすすめの洗濯方法をご紹介いたします。
静電気や繊維のチクチクで着心地が悪いと感じている場合も、お洗濯のやり方次第で解決できることもありますよ。
アクリルニットやセーターの洗濯の注意点
アクリルは化学繊維の中でも合成繊維に分類される素材です。ふっくら柔らかい風合いと暖かい羊毛(ウール)に似た性質があるため、ウールの代用としても使われることもあります。
ウールと比べると、安価であり、虫食いや毛羽立ちやフェルト化が起こりにくい、シワにもなりにくいなどのメリットがあります。そしてウールのように毛が抜けることもほとんどなく、一般的にチクチク痒いとされるのも繊維が太くて硬いウールの方です。
そしてアクリルの最大のメリットはご家庭の洗濯機で洗えるものが多いこと。ただしニットやセーターは縮んだり伸びたりしないか心配、熱に弱いのでは?と疑問に思うことも多いのではないでしょうか。
熱湯ほどのお湯でない限りお湯で洗うには問題ありません。むしろお水よりも汚れが緩みやすいためお湯の方がおすすめです。
ただし乾燥機の使用は避けておきましょう。熱によってアクリル自体が縮むことはありませんが、繊維を傷めてしまうことで伸び縮みしてしまう場合があります。
- 洗濯機で洗う場合は「おしゃれ着」などの弱水流コース
- 毛玉や静電気防止のために柔軟剤を使用する
- 自然乾燥をする
それでは実際に洗う際のお湯の温度や手順については次で解説していきます。
アクリルニットやセーターの洗濯方法
アクリルニットやセーターと一言で言ってもアクリルとウール、アクリルとナイロン、アクリルとポリエステルのように混紡であるものも多いです。
それぞれの衣類にあわせた適切な洗濯方法が記されていますので、必ず洗濯前には洗濯表示を確認するようにしましょう。ここでは洗濯機洗いの手順を紹介致します。
洗濯表示を見て以下のように桶にバツであれば水洗い不可です。つまり家庭での洗濯不可となります。クリーニング店へ依頼しましょう。
真ん中や下段のマークであれば家庭での洗濯が可能です。
家庭での洗濯禁止 | ||
液温は30℃を限度とし洗濯機で弱い洗濯が可能 | ||
40℃を限度に手洗い可能 |
服を裏返しにして洗濯ネットに入れます。洗濯頻度の低いニットやセーターの内側は汗などの臭いや黄ばみの原因となるものが蓄積されていますので裏返しが洗いがおすすめです。
洗濯ネットに入れることで衣類のシワや型崩れ、色移り、摩擦防止などあらゆる洗濯時のトラブルからも守ることができます。
ドライコースやおしゃれ着コースで洗います。洗剤はおしゃれ着用洗剤を使用し、静電気や毛玉防止のため柔軟剤を併用することをおすすめします。
洗濯表示を確認して干しましょう。何も指示が無ければニットやセーターは平干しがおすすめです。直射日光の当たらない日陰で干しましょう。
アクリルニットやセーターの干し方や乾燥方法
次にアクリルニットやセーターの干し方や乾燥方法についてご紹介してきます。
基本的にアクリルニットやセーターは乾燥機の使用による伸び縮みなどのトラブルが起きやすいため自然乾燥をおすすめします。
アクリル繊維自体が縮むことはありませんが、乾燥機の使用によってニットの網目が詰まることで縮んで見えたり、引っ張られて伸びてしまう可能性もあります。
もし洗濯表示に乾燥機使用ができるとあっても一気に乾燥機にかけるのではなく、短時間の設定にして様子を見ながら時間を増やしていくように乾燥時間を調整するのが無難です。
また、コインランドリーで乾燥機を使用する場合は家庭用よりも温度が高くなるケースが多いですのでその点も注意しましょう。
タンブル乾燥とは家庭用の洗濯乾燥機やコインランドリーでの乾燥機なども含みます。
タンブル乾燥禁止 | ||
排気温度上限80℃でタンブル乾燥可能 | ||
排気温度上限60℃の低い温度でタンブル乾燥可能 |
アクリルニットやセーターのシワ伸ばし
アクリルニットやセーターがシワになってしまったら、スチームアイロンで伸ばしてあげましょう。ただし、直接当ててしまうと熱で繊維にダメージを与えてしまう可能性がありますので浮かせて蒸気を当ててあげることがポイントです。
ここではそんなシワ伸ばしのためのアイロンのかけ方をご紹介します。
洗濯と同じようにアイロンについても使用可能か、不可なのか、できる場合は設定温度について記されています。またアイロンをする際の注意事項などがないかもあわせて確認しましょう。
アイロンがけ禁止 | ||
温度110℃を限度としてスチーム無しでアイロンかけ可能 | ||
温度150℃を限度としてアイロンかけ可能 | ||
温度200℃を限度としてアイロンかけ可能 |
ニットやセーター全体にスチームをかけていきましょう。1~2cmほど浮かせてゆっくりとアイロンを動かして蒸気を当てていくイメージです。
蒸気で濡ったニットやセーターは平らな状態で完全に乾くまで放置しましょう。
アクリルニットやセーターの毛玉の取り方と防止対策
アクリルと毛玉は切っても切れない関係と言っても良いほど、アクリルは毛玉ができやすい素材です。ある程度の大きさになると自然とちぎれていくウール素材に対し、アクリルは繊維が強いため毛玉になってもなかなかちぎれず残ってしまう特徴があります。
そのため、最初からアクリル素材は毛玉ができやすいと理解したうえできちんとケアをしていく必要があります。
毛玉の取り方
毛玉を見つけるとついつい手で引っ張ったり、むしったりしてしまいがちですが、これは絶対にしてはいけません。
このやり方だと一見毛玉は取れてきれになったように見えますが、生地は擦り減り大きなダメージを受けます。それだけでなく、さらに毛玉のできやすい負の連鎖状態となってしまいます。
おすすめなのはきちんと、毛玉をとるためのグッズを使うことです。
- 毛玉取りブラシ
- 毛玉取り器
- ハサミ
毛玉取りブラシ
100円ショップでも購入することができる毛玉取りブラシは生地を傷めにくく簡単に取ることができます。おすすめはブラシの目が細かく、柔らかいもの。
服を平らな場所に置き、毛玉のできている部分を優しく撫でる様にブラッシングしましょう。
毛玉取り器
広い範囲に毛玉ができている場合は毛玉取り器がおすすめです。毛玉に機械を当てるだけで効率的に素早く取ることができます。
ただし機械の力任せにするとかえって生地を傷めてしまう危険性もあります。使用する場合は優しく、生地表面にあててとりましょう。
ハサミ
毛玉取りのブラシや機械を購入せずともご自宅にあるハサミで切って取ることも可能です。部分的に毛玉ができた場合は手軽に使えるハサミがおすすめです。
誤って毛玉以外の生地まで切ってしまわないように浮き上がっている毛玉を軽くつまんでひとつずつ丁寧に切りましょう。
防止策
毛玉は除去することはできますが、生地を傷めてしまう危険性もありますので極力毛玉を作らないことが一番です。
そもそも毛玉は繊維の絡まり。その原因である摩擦を起こりにくくすれば防ぐことができます。次に毛玉を作らないための防止策をご紹介します。
- ブラシで毛並みを整える
- 洗濯ネットに入れて洗濯をする
- 「ドライコース」で洗う
ブラシで毛並みを整える
アクリルセーターやニットを脱いだ後に優しくブラッシングをしましょう。毛並みを整えることで繊維の絡まりがなくなり、毛玉ができにくくなります。
洗濯ネットに入れて洗濯をする
着用している時も服と服が擦れて摩擦は起きていますが、洗濯時も衣類同士がこすれ摩擦がおきます。
そのため、洗濯ネットに入れることで摩擦から守ることができます。
「ドライコース」で洗う
洗濯機の機種によっても呼び方は異なりますが、他には「おしゃれぎコース」などの呼び方があります。
標準コースよりも優しく洗い、脱水時間も短いためシワにもなりにくいため毛玉防止目的だけでなく、アクリルニットやセーターはドライコースで洗うのがおすすめです。
アクリルニットやセーターの静電気除去と防止方法
アクリルニットやセーターを脱いだ時に「バチバチッ」と激しく静電気を感じたことのある方はは多いのではないでしょうか。
あの恐怖とも呼べる静電気を除去する方法と防止法をご紹介してきます。
なぜ静電気は起きるか
洋服に限らず、私たちの体も含めどんな物質もすべてプラスとマイナスの電気を持っていて通常はプラスとマイナスの電気量が釣り合った状態になっています。
ところが2つの物質や素材間で摩擦が起きると、互いが持っているプラスとマイナスの電気が移動し、片方にはプラスの電気、もう片方にはマイナスの電気というような偏りが生じバランスを崩してしまいます。
この状態を帯電と呼んだりもしますが、私たちが着ている洋服同士、または人と洋服がこすれ合うことで静電気が発生しどんどん蓄積されていきます。
冬は特に静電気が起きやすいと言われるのは、湿度が低く乾燥するため溜まった静電気を空気中の水分を通して放電することができないからです。そして季節柄、重ね着をするため服や私たちの体との摩擦によって静電気が溜まりやすい状況を作っていたのです。
さらにアクリルのような化学繊維は吸湿性が低く、放電されにくい繊維は最も起きやすい条件となってしまいます。
静電気の除去と防止方法
静電気の除去や防止に役立つおすすめグッズや方法をご紹介します。
1. 静電気防止スプレー
手軽に服にシュッとスプレーするだけで瞬時に静電気を除去して発生を防止してくれます。速乾性もあり、着用しながらでも使えるのが魅力です。
携帯用のミニサイズなども販売されていますので、外出先用と家庭用と使い分けができる点も便利です。
2. 静電気防止機能付き衣類用ブラシ
馴染みのない方や、使ったことのない方も多いかもしれませんが、実は日々のケアで大活躍する衣類用ブラシ。
衣類を優しくブラッシングすることで毛玉防止や、ほこりや花粉を落としてくれて静電気防止にも役立ちます。絡まった繊維をほぐすことで摩擦が起きにくくなるため、静電気対策につながります。
衣類用の通常のブラシでもOKですが、静電気防止機能付きのブラシを使用すれば更に効果的です。
3. 服の素材を考えてコーディネートする
先述でアクリルは静電気が発生しやすいと述べましたが、素材によって静電気が発生しやすい・しにくいものがあります。
静電気を減らすには、静電気を発生させやすい衣類を選ばない事が基本です。以下のように+-の組み合わせをすると静電気が発生しやすくなりますので、できれば+同士、-同士のコーディネートをするのがおすすめです。
+の静電気を発生させる素材
ナイロン(++++)
ウール(+++)
レーヨン(++)
絹(+)
-の静電気を発生させる素材
アクリル(----)
ポリエステル(---)
アセテート(--)
麻(-)
4. クリーニングで静電気防止加工をしてもらう
ニットやセーターをクリーニング出す時に、オプションで静電気防止加工をしてもらう方法もあります。永久的ではありませんが、静電気による不快感を軽減することができます。
アクリルニットやセーターのチクチク解消方法
一般的にウールと比べると比較的チクチクしにくい素材ではありますが、物によっては肌にささってチクチク感じることがあります。一度気になってしまうと爪で何度もかいて赤くなったり、かぶれやアレルギー反応が出るなど悪化してしまうケースもあります。ご自身の肌に合う・合わない素材というものを理解することも大切です。
ただし、そのチクチクを軽減することもできますのでお気に入りのアクリルニットやセーターをどうしても着たい!そんな時には以下の解消法をお試し下さい。
1.肌に直接触れない着方をする
基本的には1枚でニットやセーターを着ている人はいないと思いますが、このインナーがポイントです。体にフィットするインナーを着用しましょう。
ハイネックのニットやセーターを着る時にもハイネックのインナーがありますので着用する服のシルエットにあわせて選びましょう。
2.肌の保湿をしておく
お肌の乾燥もチクチクを感じやすくする原因の一つです。特に乾燥しやすい季節は肌も乾燥しがちになります。
肌が乾燥していると皮膚のバリア機能が低下してしまうため、ちょっとした刺激でも敏感になってしまいます。
3.柔軟剤で肌触りをなめらかにする
柔軟剤は静電気防止だけでなく、繊維をやわらかくする力もあります。そのため肌触りがやさしくなりチクチクを軽減する効果が期待できます。